大阪万博・統合型リゾート(IR)が生み出す経済効果

①大阪万博2025開催決定
2025年の万博開催地が大阪に決定した。日本での万博開催は2005年の愛知以来であり、大阪での開催は実に55年ぶりである。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに続く国際的なイベントの開催となるが、1964年の東京オリンピック、1970年の大阪万博と照らし合わせられることも多く、大阪万博2025にも期待が高まっている。

②万博と統合型リゾート誘致
もともと大阪は、今回の大阪万博2025の招致とともに統合型リゾート(IR)の誘致を計画している。平成25年12月に大阪府・大阪市で「大阪府市IR立地準備会議」が設置され、翌26年4月には基本コンセプト案を立案し、大阪でのIR誘致について万博の開催地でもある夢洲での立地を軸として推進を行ってきた。日本でのIRの設置場所は全国でまず3か所とする方向で審議が進んでいるため、誘致については各自治体が熾烈な争いを行っているが、今回の大阪万博決定はかなりアドバンテージとなったとみることができる。

③万博・IRの経済効果
大阪府によると夢洲IRの経済効果は毎年6300億円、開業後7万人の雇用が創出されると試算されており、万博の経済効果は約2兆円、想定来場客数は約2,800万人と試算されている。政府は2021年前後からIR区域の認定を実施するとみられており、大阪府市では19年後半に事業者の選定を計画している。IR立地が行われるとMICE施設、ホテル、カジノなどの開発運営が行われることによる直接効果が見込まれる。
大阪でIR設置が決定し、かつ万博が開催された場合、現状の大阪府内の宿泊施設では宿泊客を吸収できないと想定されている。大阪・関西地区はすでに訪日外国人を中心にホテルの稼働率が高止まりしているが、さらにIRが立地した場合の集客見込み数は2024年で1300万人まで拡大し、さらに2030年には約2200万人になると見込んでいる。そのため、夢洲周辺で新たなホテル開発が進んだとしても宿泊客を収容しきれない可能性も高く、観光地としての人気の高い京都はもちろん、ホテル数がまだ少ない奈良・和歌山まで含めたホテル供給が必要になろう。
大阪のMICE施設は国内の他都市と比べると展示スペースの広さ、利用料金、予約の取りやすさなどの条件面で優位とはいえず、また、世界のトレンドであるオールインワン型のMICE施設に対応できていないため、会議場・展示場の新設する余地もある。
カジノにおいては開発による効果やカジノ入場料・納付金などが自治体の収入となり、大阪への収益還元が期待される。それだけだはなく、日本に足りないとされている「夜間の観光場所」を新たに提供できることになる。外国人旅行者が日本で物足りないと感じていることの一つが、夜間に遊ぶところがないことだといわれているが、海外のカジノは24時間営業が多く、カジノがその役割を果たしてくれることは間違いないだろう。それにより観光地としてさらに評価され、さらなる訪日外国人数の増加にもつながるはずだ。さらに24時間営業を行うために夜間の交通システムの確立も必要となるが、国内では実験は行われているものの24時間運行の公共交通機関は存在していない。その理由はやはりコストの問題であるが、カジノの収入を市営地下鉄・バスもしくは補助金として私鉄に還元することにより24時間運行できる可能性がある。これにより、2次的にIR地区以外でも消費の増加などの効果が見込める。
ここまでの例はあくまで表面的に期待される経済効果に過ぎないが、2次的3次的な部分まで含めれば、万博・IRが及ぼす影響はかなりの広範囲にわたることになる。大阪がIR立地に選定されるかどうか大いに注目すべきである。

                                                        編集部 志塚洋介

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