1.サブスクリプションとは
ここ数年サブスクリプションという言葉が日本でもよく聞かれるようになった。世界でも2010年代急速にサブスクリプションモデルが広まっている。サブスクリプションとは、辞書的な意味で言えば『雑誌などの定期購読』のことである。その意味では、このビジネスモデルは今に始まったものではなく、我々が普段から利用してきたものである。しかし、音楽や動画配信をコンテンツサービスの定額制を皮切りに、様々なビジネスにおいてサブスクリプション化が進んでいる。
2.サブスクリプション化が進む背景
サブスクリプション化が進む背景はユーザーの動向の変化だ。ミレニアル世代に特によくみられる特徴である『所有から利用へ』への転換、つまりものを所有するスタイルから、必要に応じて利用するスタイルへと変わっていく中で、サブスクリプション型のビジネスモデルの需要が高まっていったのである。この変化により、自動車や不動産などでカーシェア・シェアハウスといったシェア型の利用の人気が高まっている。その一方、レンタカーや、カーリースなどへのシフトも進んでいる。
また、spotifyやNetflix、Huluなど、先にあげたようなソフト・コンテンツサービスにおいては利用への転換がさらに進み、従来のプロダクト販売型ビジネスから月額制によるストック型ビジネスへの変化が顕著である。
3.分野を問わず進むサブスクリプション化
サブスクリプションの展開はコンテンツ分野にとどまっているわけではない。洋服や化粧品などの毎月定額制のレンタル事業も増えている。また、飲食業界でも肉料理レストランの「29ON」などが話題だ。
ビジネスのサブスクリプション化が業種を問わず進む中、撤退する企業も出てきている。AOKIが行っていた定額スーツレンタル「suitsbox」は開始から半年でサービス終了となった。スーツ離れが進む若年層の取り込みを目論んだサービスだったが、実際は中核層の利用が多く、店舗販売とのカニバリズムが起きてしまったのだ。また、ZOZOTOWNでは、専門スタッフがユーザーの好みに合った服を数点選んで定期的に送り、ユーザーは気に入ったものだけを購入し、残りは返品する仕組みの「おまかせ定期便」もわずか1年でサービス終了となった。
4.サブスクリプションの今後
サブスクリプションモデルの成功のためには、まずユーザーに長期にわたってサービスを継続してもらわなければならない。内容に魅力が感じられなければ解約されてしまう。解約されないためには、AIなどの活用により、ユーザーのニーズを常に把握し続け、それに合わせたサービスを提供しなければならないのだ。例えば、バッグなどの定額制レンタルを行うラクサスでは、貸し出すバッグにICタグを搭載し、GPSにより顧客がブランド店に入った情報などをキャッチし、スマホ上にラクサスでレンタルできる商品が表示される仕組みになっている。
また、旧態依然のビジネスモデルからの脱却が重要である。先のAOKIの例などはその典型だ。既存の実店舗ビジネスとの取り合いになってしまい、サブスクリプションモデルで効果的に利益を出せなかったという結果である。また、クロスセル・アップセルを狙い、基本的なサブスクリプションサービスに加えてオプションを加えることで付加価値を高めたり、いくつかのランクに分けたサービスを用意し、安いランクで満足してもらえたユーザーにはワンランク高い金額で高いサービスを提供するような仕組みが必要になる。
サブスクリプションモデルは従来の商品を中心にビジネスが展開するプロダクト販売型モデルとは違い、ユーザーを中心としてビジネスが展開するモデルである。CRMを強化し、モノの販売ではなくサービス力を販売するという視点がより求められることになろう。
HDC編集部 志塚 洋介