2020年の旅行動向見通し発表 訪日外国人旅行は引き続き拡大 。日本人の旅行市場も国内旅行、海外旅行ともに増加 -株式会社JTB-

JTBは、2020年の旅行市場についての見通しをまとめた。

■2020年の環境
1.「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」で日本が注目される年に
2020年は、いよいよ「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」(以下:「東京2020大会」)が開催される年。
新国立競技場も完成し、開会に向け気運が高まってきた。。
3月26日、福島県からスタートする聖火リレーは日本全国で約4か月にわたり、その土地の歴史や文化を活かした方法で運ばれる予定です。2020年は、地域も含めた日本の魅力を再発見する好機となり、交流を後押しすることが期待される。
2019年は、天皇陛下の即位と改元で日本の新しい時代の幕開けとなり、10月22日(火)に行われた即位の礼には各国の国家元首、王族、閣僚らが参列し、世界に向けて即位が披露されました。また、9月20日~11月2日まで開催されたアジア初の「ラグビーワールドカップ2019™(以下RWC2019)日本大会」の成功は世界のラグビーファンに日本各地でのおもてなしを伝える機会となった。一方、10月1日からは消費税増税が始まるとともに、増税対策として実施されたポイント還元制度で大きくキャッシュレス決済が広がるなど、暮らしに関わる大きな変化があった。。また各地に大きな被害をもたらした台風19号をはじめ予期せぬ自然災害が続き、復興にはまだ時間がかかっている。

■2020年のトピックス
1.2020年は「東京2020大会」前後に4連休が2回
2020年のカレンダーの特徴は夏休み期間中に「東京2020大会」の日程が組まれていること、さらに前後に4連休が2回あることです。4連休は東京2020オリンピックの開会式前日の7月23日(祝)~7月26日(日)と、敬老の日、秋分の日を含む9月19日(土)~9月22日(火)の期間だ。
2019年に10連休だったゴールデンウィーク(GW)は、2020年は5連休となるため、GWの動きは前年よりやや鈍くなりそうだ。
一方、政府は「2020年に有給取得率70%」の目標を掲げ、2019年には「年次有給休暇5日以上取得」が義務化されるなど、ワークライフバランスが推進されている。
このような有給休暇の活用やメーカーなどの企業の連続休業の取り組み次第では、首都圏を中心に宿泊料金の高騰や予約が取りづらくなる夏休みを避け、GWに計画を前倒しする人もいると考えられる。
3連休以上の休みは、2019年の8回から7回と1回減少するが、2019年にはなかった4連休が2回あることで、旅行に出かける環境としては好材料と考えられる。

2.「東京2020大会」期間中の旅行をとりまく環境
大会期間中は東京を中心に、大会関係者および観戦客による多くの移動が想定されるが、旅行全般への影響については次のように考えられる。
まず、例年では旧盆前後に最も高額になっていた国際航空券の運賃のピーク期間は、7月後半から旧盆終了まで続くと想定され、訪日外国人旅行者や、日本人の夏休みの海外旅行に影響を及ぼすことになりそうだ。また大会期間中は、首都圏の宿泊料金が高めとなることや、交通機関の混雑に伴い、観戦を目的とした旅行以外を控える日本人国内旅行者および訪日外国人旅行者も多いと考えられる。
過去のロンドンやリオデジャネイロでの大会の例をみても、大会期間中は開催地を中心に宿泊旅行需要が抑制された。しかしながら、テクノロジーの急速な進化や働き方改革が進み、休暇と業務を合わせたワーケーション、ブリージャーなど柔軟な働き方が生まれてきた。このような考え方が広がれば、旅行需要にもつながりそうだ。

3.「東京2020大会」開催が社会生活にもたらすことや意義
オリンピックにはその時々での最新技術に関するショーケースとしての側面もある。1964年に開催された東京オリンピックでは、五輪史上で初めてカラー映像が配信され、カラーテレビの普及に一役買った。2020年においても、AIや5Gなどの最新のデジタル技術を使ったサービスや機器の広がりが予想される。JTB総合研究所が11月に実施した調査結果では、約4割が5Gのスマートフォンの購入に関心を持っており、五輪後に急速に拡大する可能性も考えられる。レジャーや旅行の場面においては、高画質な動画の配信や多視点による試合観戦、ARやVRなどによる新しい楽しみ方が人々を旅行へと誘うかもしれない。

2020年の旅行の見通し
1.訪日旅行
「東京2020大会」期間中の減速は想定されるが、年間の訪日外国人旅行者数は3,430万人(前年比+7.9%)と推計
2019年の訪日外国人旅行者数は、7月までは前年を上回って推移していましたが、8月以降は日韓情勢の影響から韓国からの旅行者が減少しはじめた。
9月は「RWC2019日本大会」の開催により全体数では増加したものの、10月以降については前年割れが続いている。
1月~11月の累計では2,936万人(同+2.8%)という状況(12月18日 日本政府観光局発表)。
国別にみると、韓国以外のアジアは、中国やタイを中心に堅調に推移。リピーターの増加や地方発着のLCC路線の拡大により、地方への旅行者も増えている。
2020年は、「東京2020大会」開催による訪日外国人旅行者の増加が期待されるが、2019年の「RWC2019日本大会」のような全国かつ、長期間開催とは違い、開催期間はそれぞれ17日間と13日間で札幌を除けば、東京周辺が主な会場。よって訪日客は観戦者が中心となり、爆発的な増加は考えにくいのが現状。東京と同じように経済が成熟した国の首都開催だった2012年のロンドン大会を例にすると、大会期間中のイギリスへの訪問者は前年の同月と比較して4.2%減少したが、2012年の1年間に訪れた外国人は、前年と比較して0.9%増加だった(英国国家統計局)。
2020年の訪日外国人旅行者数は、世界景気の減速による減少の懸念はあるが、低迷する韓国からの旅行者が2019年比で15%程度まで回復すると仮定し、「東京2020大会」開催による波及効果、今年1月から中国やインドを対象にビザの発給要件が緩和されたことや日本路線の増便、旅行者の伸びが続く中国、および経済成長の著しいアジア新興国からの旅行者数の増加が見込まれることから、3,430万人(前年比+7.9%)と推計する。

・宿泊施設の多様化と民泊の利用、ラグジュアリーホテルの開業相次ぐ
訪日外国人旅行者の増加に伴い、各地でホテルの数が増えている。同時に、ゲストハウスなどの簡易宿所も大幅に増え、訪日外国人旅行者の利用も増えている。
近年、古民家や歴史的な建造物を活用した宿泊施設やテーマ性の高い宿泊施設も増え、その地に伝わる生活文化の体験が訪日外国人旅行者の関心を集めている。
民泊については、今年行われた「RWC2019日本大会」では、日本人を含む期間中の利用者が65万人に達したサイトもあった。
「東京2020大会」期間中も多くの利用者が見込まれる。また、2020年は日本には足りないといわれているラグジュアリーホテルが続々と新規開業する。

・急激な旅行者の増加やリピーターの増加への対応として、地域も量から質への追及に転換「国立公園満喫プロジェクト」などで日本の自然も魅力としてアピール
訪日外国人旅行者の増加につれ、日本を初めて訪れる旅行者だけでなく、何度も繰り返し訪れるリピーターの割合も増えてきた。日本への旅行に求めることも多様化し、スポーツ観戦、イベント参加、食を楽しむなど特定の目的を持った旅行や、都市部や有名な観光地だけではなく、日本人でも訪れる人が多くない地域へと足を運ぶ旅行者も増加している。
しかしながら、地域の人々にとっては生活圏でもあるエリアで多くの旅行者を受け入れるには限界があり、最近は旅行者数を追及することから、本物、かつ高品質な価値を理解してくれる少数の旅行者に提供する、いわゆる量から質への転換を図る地域が増えています。事例の一つとして、環境省では、日本の国立公園を世界へ向けた魅力的な観光資源として整備する「国立公園満喫プロジェクト」を推進しており、アドベンチャーツーリズムやエコツーリズムなども含め、日本の豊かな自然や自然の中での付加価値の高い体験が注目されそうだ。

2.国内旅行   *訪日外国人旅行者は除く、日本居住者の国内旅行
国内旅行人数は2億8,632万人(前年比+0.5%)、平均消費額は38,130円(前年比+4.0%)、
国内旅行消費額は10兆9,200 億円(前年比+4.6%)と推計
観光庁の宿泊旅行統計調査によると、2019年の日本人の延べ宿泊者数(宿泊施設に泊まった人)は、GW10連休の効果もあり、1月~10月の累計で2018年を0.3ポイント上回ってる。ただし、台風や大雨の影響などで6月以降は前年割れが続いています。10月からの消費税増税も始まり、ゆとりがなくなったと感じている人は増えている。そうした経済環境への先行き不安要素はあるものの、株価、雇用環境は悪化していない。2020年前半は前年のGWの反動や景況感、「東京2020大会」前後の首都圏を中心とした旅行抑制の影響などで勢いがないと考えられるが、後半には消費税増税の影響が薄れ、オリンピック後の宿泊施設料金も落ち着くと考えられることから、旅行人数は微増を予測します。平均消費額については、消費税増税の影響と、「東京2020大会」開催による宿泊料金の上昇などから、昨年より増加すると推計する。

・SNSにより「個」の力が強まり、ニッチマーケットを後押し
現在は誰もがスマートフォンを所有し、SNSを通じて各人のネットワークが構築され、情報の取得だけではなく「発信」することが当たり前になり、「個」の力が強くなっている。それにつれて個人の価値観や志向がより強く反映され、特定の目的を持った「目的型」の観光も増えてきた。
一つ一つのマーケットは決して大きくないが、SNSのつながりなどによって、大きく育つ可能性もある。
例えば、御朱印集めや城巡りなどもその一つ。日本の文化を身近に感じられる機会でもあり、「集める(コレクション)」魅力も人気の理由となっている。「日本百名城」や「続日本百名城」に選定された城をめぐる旅も人気。2020年の大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」は3年ぶりに戦国時代が舞台となり、ゆかりの地を訪れる人も多いと考えられる。

・個人の志向の多様化や異業種の参入による宿泊施設の多様化
個人の志向の多様化により、いわゆる観光地だけでなく、ありふれた地域の人々の生活文化に触れるなど、旅先の日常の中にある、ちょっとした非日常(異日常)が注目され、訪れるエリアが増えるとともに、宿泊施設も変化しつつある。商店街や空き家などを改築し、まち全体をコンテンツ化して地域活性化を図る分散型ホテルも広がってきた。
滋賀県大津市の百町商店街では、古い町家を改築した「商店街ホテル」を開業し、旅行者がホテル内を移動するようにまち中を歩き、地元の文化や食を体験できる場となっている。
異業種からのホテル参入も活発で、宿泊施設の多様化によって滞在の楽しみが増え、国内旅行のきっかけとなることが期待される。

・人気のテーマパークでは新エリアの開業
2020年は、4月には東京ディズニーランド®にディズニー映画『美女と野獣』をテーマにした新エリア「ニューファンタジーランド」がオープンする。 ユニバーサル・スタジオ・ジャパン™は、「東京2020大会」の開催前に新エリア『SUPER NINTENDO WORLD』のオープンを予定している。
また、新たに屋内型ミニチュア・テーマパーク「スモールワールズTOKYO」が東京・有明にオープンする。

​3.海外旅行
海外旅行人数は2,080万人(前年比+4.0%)、平均消費額は226,600円(前年比+1.1%)、海外旅行消費額は4兆7,100億円(前年比+5.1%)と推計
2019年の日本人の出国者数は、1月~11月までの累計で対前年比6.0%増の1,837万人となり、ほぼ毎月、前年同月を上回り、海外旅行が自由化されて以来初の2,000万人に達成するかが旅行業界で注目されている。通年で好調に推移してきた海外旅行ですが、日韓関係の影響から、韓国線の運休や減便が相次ぎ、韓国行きの旅行者が減少してきたことから全体数も失速してきた。一方で、2020年は羽田空港における国際線発着枠の増加に伴う増便や、訪日外国人旅行者数の伸率低下による日本人旅行者へ提供される航空座席数の増加、為替の円高傾向などは海外旅行のプラス材料となりそうだ。また、雇用環境が良いことは、出国率の上昇をけん引するジェネレーションZ世代(20代前半)の、卒業旅行を含めた海外旅行を後押しすることにもなりそうだ。
2020年の海外旅行者数は、人数は増加と予測するが、昨年のGW10連休の反動等を踏まえて4.0%増と予測。平均消費額は、欧米路線の増加から長距離旅行やビジネス需要の増加を見込み、1.1%増と推計。

・海外旅行の形態の変化が進む。予約の簡便さと情報収集の容易さで個人旅行が増加
JTB総合研究所の海外旅行に関する調査によると、自分自身で宿泊施設や飛行機を予約購入する個人旅行の割合が年々増加しています。また、同行者と出発から帰着まで行動を共にする旅行スタイルだけでなく、現地集合・現地解散をした経験がある人も3割程度と少なくない。
このように、行程の自由度が高い個人旅行の広がりや、スマートフォンによって「タビナカ」の情報収集が容易になったことなども手伝い、現地ツアーの活用が進んでいる。現地での体験がより豊富になり、交流も深まることでリピートの増加にもつながる可能性がありそうだ。

・羽田空港発着の国際線増便で出張などのビジネス利用も増加
2020年は、羽田空港の国際線発着枠の増加に伴い、1日50便の増便が予定されている。国・地域別では米国、中国、ロシア、オーストラリア、インド、イタリア、トルコ、フィンランド、スカンジナビアで、都心にある空港から出発できる利便性からレジャー需要に限らず、出張などのビジネスでの利用も増えそうだ。
羽田空港以外にも、成田―ウラジオストク、成田―ベンガルール(インド)、関西―イスタンブール、関西―チューリッヒなど国際線の新規就航も続く。
また、LCCについては、2019年は、日韓情勢による韓国線の大幅な減便や価格の下落もありましたが、9月には中部国際空港にLCC用の第2ターミナルもオープンし、2020年も引き続きアジアや中国を中心に路線拡充が期待される。

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