■乳がんは更年期女性に多いがんです。
乳がんは日本人女性に多い悪性腫瘍(しゅよう)の第1位で、その発症は、45歳~50歳をピークにして急激に増えています。乳がんが増えている背景には、時代の変化に伴う生活習慣や食生活の変化があります。現代の女性は初潮が早く、出産回数が少ないうえに、長生きであることから、生涯に経験する月経の回数は明治時代の女性の10倍ともいわれています。これは、女性ホルモンであるエストロゲンに影響を受ける期間が長くなったことを意味しています。エストロゲンは女性には不可欠なホルモンですが、乳房にできたがん細胞が増えるのを促してしまうという一面があるのです。そのほかにも、閉経後に太ることや、不規則な生活は乳がんのリスクになります。たとえば、キャビンアテンダントや医療従事者など、昼夜が逆転するような生活を20年以上続けている人は、乳がんのリスクが3倍くらいになるといわれていますし、毎日ビールをジョッキ2杯以上、ワインをグラス2杯以上飲む方は、飲まない方に比べリスクが高くなることもわかっています。
日本は今や、女性の12人に1人が一生のうちに乳がんを経験するという時代で、この数字は今後さらに増えていくと予想されています。乳がんは決して他人事ではないということを忘れないでください。
■早期発見・早期治療で治せる時代!乳がん検診に行きましょう。
乳がんは、女性に一番多いがんですが、死亡率でみると第4位です。これは、乳がんが比較的発見しやすく、治しやすいがんであるということです。それでも日本の乳がん検診の受診率は40%未満と諸外国に比べて極めて低く、日本人は健康志向である反面、検診ぎらいの人種であるようです。乳がんのリスクが高まる世代は、同時に更年期を迎える世代でもあります。更年期の症状は、女性ホルモンのエストロゲンが急激に減少することで引き起こされますが、更年期の症状を緩和する「ホルモン補充療法(HRT)」は、乳がんのリスクを高める可能性があるとして避けられる場合があります。私としては、むやみにHRTを恐れるのではなく、HRTを続けながら、乳がん検診を確実に行った方が早期発見につながると考えています。残念ながら、どんな暮らしをしていても、すべての方が乳がんになる可能性があります。大切なのは、とにかく早いうちに見つけることです。普段から自己触診を行えば、小さな変化にも気がつくことができますし、どんなに忙しくても、ご自分が健康でなければ家族を大切にできないという気持ちで、乳がん検診に行きましょう。
■更年期症状にはもちろん、乳がんの治療の過程で、サプリメントをご提案することもあります。
乳がんの治療の過程で、更年期のような症状が現れることがあります。私は、このような方や、更年期の諸症状があるけれどHRTは気が進まないという方に、大豆イソフラボンの代謝産物である「エクオール」のサプリメントをおすすめしています。エクオールは体内でエストロゲンに似た働きをするため、症状の緩和が期待できるのです。もちろん普段の食生活から大豆食品を積極的に食べることは大切です。しかし、たとえば毎日欠かさずに味噌汁を2杯飲むのは難しいと思うので、サプリメントを上手に取り入れてみましょう。エクオールは私も摂っていますが、食品なので副作用の心配がありませんし、使用して1~2ヵ月くらいで変化を感じる方が多いようです。
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<プロフィール>
土井卓子先生
昭和59年横浜市立大学医学部卒業、日本外科学科専門医、指導医、日本乳癌学会専門医、指導医、日本消化器病学会専門医
一人一人を支える乳がん治療をしたいと思っております。
ピンクリボン神奈川の代表を務めており、検診受診率が上がって乳がんで苦しむ人を減らしたいと考えています。