外食産業でも進むロカボの流れ

食に関する重要なキーワードのひとつに『健康志向』というワードが挙げられる。食に関する健康志向は、最近に始まったことではなく、2、30年前から続いている現象である。日本政策金融公庫が平成29年1月に実施した調査によると、食の嗜好について、「健康志向」を重視すると答えた人の割合は44.1%だった。(出所:日本政策金融公庫『消費者動向調査:食の志向』

https://www.jfc.go.jp/n/release/pdf/topics_170302a.pdf#search=%27%E6%B6%88%E8%B2%BB%E8%80%85%E5%8B%95%E5%90%91%E8%AA%BF%E6%9F%BB%EF%BC%9A%E9%A3%9F%E3%81%AE%E5%BF%97%E5%90%91%27

この健康志向ブームはナタデココ、ブルーベリー、アサイーなど、ダイエットに効くとか、目に良いという理由で特定の成分を含む食材が注目されるブームが起こる一方で、肉よりも魚、動物性たんぱく質よりも植物性たんぱく質など、不健康なものをあまり食べないようにするというような大きな流れも同時に存在している。

 そんな中、現在の健康志向ブームで注目されているのは「ロカボ」だろう。ロカボとは低炭水化物を意味するLow Carbonhydrateの略である。RIZAPが炭水化物と糖質を制限する食生活を推奨していることもあり、ここ数年でかなり浸透した食事方法になっている。このロカボの市場規模は2017年には4000億円を近くになるとも言われている。

 外食業界にもロカボの波が訪れており、元々健康食を売りにしていた飲食店では、当然のことながらロカボメニューを拡充するとともにメニューごとに糖質の表示を行うなどの動きが出ている。今回のロカボブームに特徴的なのが健康志向のイメージが薄いファーストフード店でもロカボの波に乗る動きが出てきていることだ。ファーストフードの食事の構成はパン・米・麺におかずとなるものが乗っているか挟まっているかという作りになっており、炭水化物の割合が高いのが特徴である。そこにロカボの発想を取り入れ、例えばファーストキッチンでは糖質の低いバンズを使ったメニューが、牛丼チェーンのすき家ではコメの代わりにこんにゃくを使用した「ロカボ牛麺」というメニューも登場している。また、長崎ちゃんぽんのリンガーハットではちゃんぽんから麺を抜きスープとして販売するというメニューも考案されている。

健康志向の流れは世界的な潮流でもあり、今や、お店選びの大きなファクターになっている。ミスタードーナツなどの外食部門を運営するダスキンでは2017年3月期決算において本業のクリーン事業が好調だったが、外食部門の業績が不調だった。ダスキン山村社長はIR説明会で「消費者の健康志向のニーズに対応できなかったことが外食部門の業績不振の原因の一つだ」と述べている。この健康ブームへの出遅れに対し、ミスタードーナツでは8月にタニタと共同開発した商品を発表した。もちろんそこまでの商品開発が難しい場合もあるだろうが、これまで、健康志向とは結び付きにくいメニューしかなかった飲食店でも、炭水化物を他の食材に置き換える、糖質を制限するなどちょっとした工夫で健康メニューを提供できるところが「ロカボ」市場の拡大の背景の一つだろう。

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